QBM385 うつ病を治す!(4)

QBM385 うつ病を治す!(4)

 

 1-3 10人のセラピストを回って来たBさん

 

私の研究所に来所される方は、大体半分が、他所を回ってから来られます。実は、10カ所回って来たと言われる方も、決して珍しくありません。

10年ほど前に来られたBさん(男性、30歳)も、その一人でした。

最初から来られた方とは異なり、他所で満足できずに来られた方は、「どうにかして欲しい」という強い願望をお持ちである半面、セラピストに対する不信感も少なからずお持ちなのです。以前勤めていた会社を辞職し、今は自宅で何もできずに過ごしていると言われます。Bさんは、私の能力を推し量るように、上目遣いでじっと見つめています。

一般に、女性に比べて男性は、心をオープンにすることが不得意です。日頃から社会生活で構えるのが当たり前になっていることもあり、なかなか素直になりにくいのです。

その上にうつ病ということで、Bさんは、とても慎重になっていました。

15分ほど会話をしたところで、急にBさんが、単刀直入といった雰囲気で質問してきました。

「先生、私、治りますか」

私は、ごく自然体でお答えしました。

「ええ、治りますよ」

するとBさんは、ひどく驚かれたようでした。

「今まで、そんなに率直に言ってくださる方は、一人もいませんでした」

日本では、積極的傾聴というカウンセリングの方法が流行っていて、大手のカウンセラーの養成機関では、「セラピストは自分の考えを言ってはいけない」と教えているところもあるようです。つまりAさんの質問に対して、教科書的に言うなら、「あなたは、治るかどうか不安なんですね」みたいに、質問に対して質問で答えることになるのです。

でも、Bさんと15分も話していれば、彼が自分の心を健康にするための十分なエネルギーをもっていることなど、直ぐに分かります。それで私は、思ったままをお答えしたのです。

私が素直にお答えしたことで、Bさんの顔色が少しだけ明るくなりました。

もちろん、問題はここからです。

Bさんは、自分のペースを失わないように、とても注意深く話をされます。頭脳明晰であることも影響してプライドが高くなり、誰かに自分を委ねることが、とても不得意なのです。「私は、こうあらねばならない」という類の思いが強く、それを乱されることを極度に嫌っていました。

ところが、自立心が強い一方で、何回かBさんは、「死にたい」と言うことばを口にします。直ぐに危ないという感じはしませんが、油断する訳にはいきません。彼の心の中で、プライドの高い人格と、すべてを投げ捨ててしまいたいという衝動が、激しく戦っていました。

私は、あくまでも自分で自分を管理しようとするBさんの顔を眺めながら、いくつかの方法を思い浮かべ、比較検討しました。そして、その中の一つを選ぶことにしました。

Bさんご自身に、本書に書いてある「第1の決め手」から「第5の決め手」までを学んでいただき、他人に心を委ねることなく、自分で自分を治す方法です。

この方法であれば、Bさんは、自分の力で困難を乗り越えることができるので、きっと自信を取り戻すことでしょう。

私は、Bさんに提案しました。

それは、全8回のセミナーをまず受けていただき、その後でカウンセリングを続けるというものです。セミナーと言っても個人セッションですので、半分はBさんの個人的な問題を扱うこともできます。

理論を理解して頂ければ、カウンセリングになった段階でも、私の考えを容易にお伝えすることができ、結果的に効率良く早く終えることができるはずなのです。

Bさんは、暫く迷っていましたが、これまで10人ものセラピストを回って来て、「もう同じことを繰り返すのはごめんだ」と言います。それで、私の提案を受け入れてくださいました。

セミナーを始めてみると、Bさんは、素晴らしい理解力を示してくれました。これまでにも心理学を色々と勉強されたそうですが、「今まで勉強したことは、いったい何だったんだろう」と驚かれ、興味津津といった姿勢になり、そのこと自体もプラスに働きました。

3カ月後には、もう「死にたい」ということばを口にすることはなくなり、半年後には、「もっと勉強して、人生に役立てたい」という積極的な気持ちに変わっていました。

もちろん、1年を待たずにうつ病は完治し、二度と再発することもないし、世間で言う「心の脆弱性が残る」などということもありませんでした。むしろ、うつ病になる前のBさんよりも感性が豊かになり、頭脳明晰になったと言われます。

彼は、うつ病を完治させただけでなく、親から受けた様々な心の傷を自分で解消してゆきました。

そしてBさんの場合も、それだけでは終わりませんでした。

「実は、以前元気なころに立てた計画があるんです」

それは、アジアの国々から家具を輸入、販売する会社を起業することでした。周囲からは、貿易の知識が不十分だとか、英語もそれほどじゃないなど、色々反対されたそうですが、Bさんの心は盤石でした。

最後のカウンセリングを終えてから1年後、彼と再会したとき、差し出された名刺には貿易会社の社名がしっかりと記されていたのです。

私は、もっと多くの方々に、ご自身で心を治す方法を広められないかと考えました。

心とは、その人自身、そのものと言っても過言ではありません。心を委ねるカウンセラーが、いかに信用できる人間だとしても、他人であることに変わりはないのです。ご自身で問題を解決できた方が良いに決まっています。その方法が確立できれば、カウンセラーに話をしたくない人であっても、心の状態を改善する道が開けるからです。

そこで、本書に書いたような「自分で自分の心を作る」方法を完成させたのです。

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