QBM384 うつ病を治す!(3)

QBM384 うつ病を治す!(3)

 

 1-2 10年治らなかったAさん

 

Aさん(女性、35歳)が来所されたのは、今から20年ほど前のことでした。初めてお会いしたときのAさんは、残念ながらかなり重いうつ病になっておられました。お聞きしたところ、10年ほど前から病院の精神科に通われ、同時に心理カウンセラーのお世話にもなってきたとのこと。

可愛らしい顔も、暗い表情に包まれ、うつむき加減で、これまでの10年間の思いが刻まれているように見えました。私と話をする間も、ずっとボーッとしています。大量の向精神薬を処方されているとのことでした。

私は、一瞬、引き受けるべきかどうか、迷いました。当時、まだまだ未熟だった私に、とこまで対処できるか、分からなかったからです。

でも、私に決断させる一言がありました。

「Aさん、治りたいですか?」

という私の問いかけに、

「絶対に、治りたいです。・・・絶対に治りたいです」

まったくぶれない、きっぱりとした答えが返ってきたのです。その後、何回お聞きしても、この点でぶれたことはありませんでした。

心に問題を抱えたクライアントさんの多くは、なかなか自分の意思を明確に示すことが、難しいものです。

でも、Aさんは、違いました。

「Aさん、分かりました。お引き受けします。でもね、Aさん。もしここに半年通われて、まったく効果がなかったら、私は無力です。そのときは、他のカウンセラーを探していただくか、私がご紹介しますね。もちろん、半年後に確かな効果が実感できたら、更に続けることも、そこで良しとして終わりにすることもご自由です」

私が、前もってこんなことを言うのは、自分の力の及ばないクライアントを無駄に引き止めてしまうことで、彼ら、彼女らの貴重な人生の時間を無駄にさせたくないからなのです。また、半年過ぎてからこんなことを言うと、「捨てられた」と勘違いしてしまう可能性すらあります。

幸運なことに、これまで真面目に通って下さったクライアントの中には、「効果が無かったから」と言って去って行かれて方は、居られません。

私は、Aさんにとっての、25歳からの10年間について思いを巡らします。それは、一般的には人生で一番楽しい活動的な年月だったはずのものです。「効果が無いなら、10年間も、自分のところに引き止めておくなよ」と言いたい。そんな権利など、私たちセラピストには無いと思っている私には、何とも言い難い思いがありました。

それでも、Aさんを引き受けることは、当時の私にとっては、かなりの覚悟を必要とする決断でした。

担当医の許可を頂き、ご家族ともお会いして、カウンセリングをスタートしました。医師も、ご両親も、Aさんについてはもう諦めて居られます。それでも諦めないAさんに、私は、引き受けて良かったと思いました。

私は、1回のカウンセリングを90分に設定しています。

しかし、Aさんは、ゆっくりと小さな声で話すのがやっとですし、30分もすると「眠くなりました」と言って、うつらうつらしてしまいます。

私は、未完成ではあったものの量子脳メソッドの全てを投入して、全力で心理カウンセリングを進めました。

最初のころ、さすがに微々たる変化しか見られませんでしたが、数カ月すると、90分、フルにカウンセリングができるようになりました。私は、本書に書いてある「第1の決め手」と「第2の決め手」そして「第3の決め手」までを駆使して、仕事を進めてゆきました。

すると、どうでしょうか。

半年目を迎えるころには、Aさんが、時々ではありましたが、「ふふふ」と、笑うようになってきたのです。

私が「何とかなる」という確信をもったのは、この時期でした。

1年を過ぎるころには、ご自身の人生設計ができるまでになってきました。今まで真っ暗だったはずの「将来」について、堂々とご自身の気持ちを語るAさんは、輝いて見えました。

今思い出しても、2年間、本当に頑張ってくれたと思います。うつ病の方の心は、大海に舞う木の葉のような気分になりやすいのです。随分前に進んだと思っていると、あっと言う間に押し戻されたように錯覚してしまいます。でも、諦めることさえなければ、必ず目的地に到着できるのです。

そのための方法は、本書に書いてあります。

そしてある日、1本の電話が掛かってきました。

「先生、就職試験、合格しました」

電話の向こう側で、Aさんの声が泣いていました。でも、私の方が、もっと泣きたい気分でした。彼女の声を聞きながら、私自身「生きていて良かった」と思ったからです。

それから数日後に、紅茶とケーキで祝杯を挙げました。私は、両肩からとても重い荷物を下ろすことができました。

でも、話はここで終わりでは無いのです。

それから3年後、久しぶりにAさんから電話がありました。

「先生、プロポーズされちゃいました」

大変失礼なのですが、私は一瞬、まさかと思ってしまったのです。

でもそれは、嘘でも冗談でもありませんでした。

5年前に初めて来所されたころのAさんの姿が、私の脳裏にしっかりと焼き付いていました。でも、もうAさんは、別人になっていたのです。

数カ月後に、「結婚しました」という知らせ。

その晩、私は、彼女の顔を思い浮かべながら、一人で酒を呑み、Aさんの頑張りに乾杯しました。

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